うんじゃくせしぼんを開く。

読んだことのある本などの感想をかいていこうとおもいます。記事はダウンロードできません。

異世界食堂 4巻 感想

 じいさん(山方大樹)とヨミ(暦)の出会いから始まります。
そして、異世界食堂の始まりと終わりの「鍵」の存在。


1巻から3巻では語られることのなかった、いろいろな秘密が
次から次と出てきます。
そして文庫版のみの特別収録「あさごはん」
じいさんが赤くなって・・・。まあ楽しい。
WEB小説版では読めません。
ついでにアニメ化も「お祝い」ですね。

 

ただ個人的に不満なのはwebと書籍で扱いが変わったクロが殆ど話に絡んでこないので何で変えたの?と思ってしまいます。

一冊の中で二言三言喋るだけ。なら出さなければよかったのに、と思ってしまいます。

りゅうおうのおしごと! 6巻 感想

「初動がすべて」というラノベ界の常識を覆した存在そのものが奇跡の塊みたいなシリーズ。
「神殺し」の様な盛り上がりを見せた前巻で主人公・八一の物語は一段落付いた中、話をどっちへ振るのか予想できないまま拝読。

物語は竜王位防衛を達成した八一たちが関西将棋会館で新年を迎えている場面から始まります。
「ナニワの帝王」の異名をとる関西将棋界の重鎮・蔵王の引退宣言を受けて若干寂しい雰囲気が漂う中、
新年会の席で注目を浴びるのは八一の姉弟子・銀子でした。

翌日に奨励会三段編入試験の試験官としてアマ三冠、かつて三段リーグを年齢制限で退会した辛香アマ三段を
相手にする事になった銀子は自身もあと一勝で三段昇格が決まる状況を迎えていた。
女性として三段に昇格すれば史上初という事で嫌でも注目を浴びる銀子でしたが、
その会場にはもう一人、銀子と同レベルの注目を浴びる存在が。

「史上初の小学生棋士」を目前にした椚二段。
小学五年生で奨励会の二段に在籍するという破格の才能の持ち主が自分たちとそう変わらない世代にいるという
事実に驚愕するあいと天衣の弟子二人。

盛り上がる新年会の会場だったが、銀子目当てに乱入してきた一人の女性によって大混乱になります。
日本酒の一升瓶と日本刀を持って暴れ込んできたのは女性として初の本因坊位を勝ち取った「シューマイ先生」こと
本因坊秀埋は銀子に対し体力で劣る女性が何かを勝ち取るには「強烈な努力」が不可欠だと言い放ちます。

そして迎えた奨励会三段編入試験の日、会場に現れた辛香アマ三段が銀子に「この駒を使って良いか?」と取り出したのは
かつて奨励会の退会者に贈られたという「退会駒」。
「現役の奨励会会員」を相手にしているという状況を作りあげた辛香の毒気は銀子を侵し、凍り付かせ…

九頭竜八一がこの作品の表の主人公であるとするなら、間違いなく裏の主人公は空銀子である、という事だけは強烈に伝わってきました。
三巻で想い人である八一を「将棋星人」と称し、才能の無い自分を「ただの地球人」と貶め、蔑みながら
「将棋星人が住む星は凄く遠くて、その星の空気は地球人にとって毒、行けばきっと死んでしまう」と自覚してなお
「けれど、私はそこへ行きたい」と中学生の女の子とは思えないぐらい悲壮な決意の下で生きている空銀子というヒロインを
今後は物語のもう一つの軸として描きたいのだろうか?そんな事を思わずにはいられない一冊でした。

物語の方はそんな銀子が所属する「奨励会」の厳しさを、一度はその世界から年齢制限で追い出されながらも
全く諦めていなかった男との「復讐」とでも称するべき一戦に敗れて突き付けられる姿を描く事から始め、
プロへの登竜門である三段リーグ昇格を賭けて「史上初の女性三段」が目の前に迫った状況の中、
同じく「史上初の小学生棋士」の座が目の前に迫った小学生・椚二段との対局に臨むまでが描かれています。

話のもう一つの軸となっているのは「将棋ソフト」の存在です。
暫く前にソフトの力に頼っているのではないか、という棋士の存在がニュースで騒がれていたのは
将棋ファンならず、世間に知れ渡っている事であるけれども、技術の進歩によって棋士の長い歴史で積み重ねられてきた
「経験」の上に成り立つ戦術を圧倒的な演算力で瞬く間に追い越そうとしているコンピューターの存在が
同じ人間である棋士を相手に自分を鍛え上げてきた棋士を嘲笑うかのように、異質な棋士を産み出している状況が描かれています。

この「異質さ」が何というか…非常に生理的にキツかったです。
徳弘正也の「狂四郎2030」の序盤の方に遺伝子工学の結晶であり、「完璧な人間」として作られた八木少将に迫られた
ヒロインが相手を人間として感じられないという「人と全く同じ姿をしたミュータント」の不気味さを味わうシーンがあるけど
今回、純粋に将棋ソフトで育った椚二段を前にした銀子を通じて読者が味わう感覚がまさにこれに近い。
「人を相手にしているとは思えない」不気味さがじわじわと心を侵し、士気や勇気を挫いていく侵食感には若干の吐き気すら覚えます。

その「ミュータント」を前にした銀子の対局は非常に意外な形でケリが付くのだが、
その結果によって自ら地獄の蓋を開けてしまった事に嫌でも気付かされた銀子が慣れ親しんだ関西将棋会館すらも
地獄の様に感じられる絶望感の中で「……やいち……こわいよ……たすけてよぉ……」と身悶えするかのように
絶望感に打ち震える姿は「痛ましい」以外の言葉が出てこない。

ちょっと使い過ぎの感もある見開きの両端にイラストを置く構図もこのミュータント相手の対局終盤で見せた
「勝った方が絶望の表情を浮かべ、負けた方が笑う」という奇怪極まる状況の表現としても最高に効果的で
イラスト担当のしらび氏が描いた銀子の表情にはもはやサディスティックな愉悦すら引き出される様でした。


新キャラも沢山登場しますが、八一の対局シーン自体はありません。どちらかというと対局パートよりも日常パートが多めの今回、最後の場面もあって次巻への期待が強まる巻でした。
5巻のような感動が再度訪れるか。この作品、竜王戦という山場を越えても変わらず面白くてオススメです。

 

 

理想のヒモ生活 9巻 感想

ヒモ生活というタイトルなのに相変わらず妻子のために精力的に働く主人公。
政治の話となるとライトノベルやネット小説では国が滅びそうだ内乱だ侵略だといった派手な方向に行きがちだがこのシリーズでは安定した立場どうしの比較的穏やかな政争がメインになります。

 

多少失敗したところで主人公の立場が大幅に悪くなることは無いと解っているので安心して読めます。


別に主人公が好きではないが目的のために主人公に近づく女性キャラが魅力的に書かれているのもこのシリーズの魅力。
 
内容的には現代知識チートで大国の王様をやりこめる話でなのですが、確かにやりこめるのは成功したものの無駄に有能さを示してしまい目を付けられ他国に有益な技術を流出させてしまうという失態をおかしてしまう。

そこら辺の勝ちきれないところも魅力だとは思うのですが。


謎の組織『協会』が侵略に来る可能性をほのめかしつつ終わるという感じでです。

 

今回はちょびっと善治郎がキレました。

やはり3年程度のなんちゃって王族では急所を突かれると庶民としての感情が出ちゃいますね。その辺が自然で凄くいいです。

まぁ、常に平静を保つことで失点を出さなかったんですが、今回は保てなかったことでちょっとやらかしていますが。

で、相変わらず、表紙の子やら、大貴族の子やら、善治郎の側室候補が顔を出します。悲しいばかりにスルーされていますが。一人、既に陥落した某姫様のような反応を示したのがいましたが。多分、あの子は気が合うんだろうな。いや、私は表紙の子のあざとさが好きですが(善治郎はそのあざとさを見抜いて心の閻魔帳にしっかりマイナス評価してたり)。

双王国には、目を付けられましたので、今後は表紙の子、ボナ王女、大貴族の子のどれかからの側室攻勢が強まりそうです。

 

 

 

ソード・ワールド2.0リプレイ 竜伯爵は没落しました! 2巻 感想

前巻の大惨事をみて、ダイスゲームは波乱が怖いと再認識、
ギリギリの攻防が楽しい(SW2.0リプレイのガレリアやレーゼルドーン)のはもちろんですが、
GMとプレイヤーの技があれば大惨事が物語を膨らませてくれることもあります。
SW1.0でのイリーナ沈没や、ダブルクロスエクソダスの矢野PCジャーム化と
その後の物語はまだまだ記憶に残っています。

素人のゲームなら、主人公死亡時点でやり直しとかもありうるでしょうが、
プロフェッショナルとして後をどう繋げてくるか期待してました。

過去に積まれた設定を振り返ると、
穢れMAXのドレイクの蘇生と剣の復活、あるいは蛮族領の領主として相応しい強さを手に入れる為には、

1.魔剣を折って(ORどっか遠くに封印して)穢れを減少してリザレクション
1-1.イレイス・ブランデッドの後にソウル・オブ・ドレイク的な剣を手に入れるOR封印した剣を戻す
1-2.蘇生後に血の接吻でノスフェラトウ

2.コールゴッド
 魔改造の穢れた体でもまっさらに出来ると、ルルブかどこかに在った気がします。
 ならば、低レベルのドレイク一匹くらい、神様ならどうにかできると思います。

3.ジャガスラ
 新米女神キャンペーンで出てきた穢れの出し入れができる魔剣のようなものを手に入れる、
 穢れが抜ければ、普通に蘇生とイレイス・ブランデッドの後に穢れを戻せばいい。

普通に考えれば1-1だと思いますが、死体が剣を折るのを嫌がっている、
更に母親が事故の影響で剣折れのうえに下手人容疑者に求婚されているということで、
期待も膨らむ第二巻です。

二話構成で、一話目は秋田さんお得意の愉快なダンジョン、
そして二話目は何かこれまでのSW2.0とは全く異なる風情の物語の展開になります。
細かい話はネタばれなので避けますが、シャドウランとかゲヘナとかが好きな人は気に入るはず。

雰囲気として、偽悪を楽しむと言うよりは、目的のためには手段を選ばないのが基本だけど、
感情のためにそれを覆すこともありかも、みたいな感じです。
普通ならばPCの選択肢として入ってこないような手段も俎上に上がってくるのが楽しいのです。

基本的には復活の方法探しとなるのですが、探しに行ったところが客分のアシュリーの故郷、
アシュリーがヴァルテックにやって来た経緯に故郷の後継者抗争が関わっていて、
建前より実力の現実の中でのPC/NPCの判断や立ち回りもまた面白いものです。

色々在って坊ちゃん復活の手段が見え始めましたが、
最後にGMがひっそりと意地悪な笑いを浮かべていて続きが楽しみ。

そして今回も荒れるダイス目が惨事を呼び込みました。
TRPGはサイコロのおかげで赤い彗星になれることもありますが、酷い目に遭うことが多い気がします・・・